NTL『戦火の馬』がとてもよかった
4年くらい前の上映でどうしてもタイミングが合わなくて観れず、やっと!
日曜日ってこともあって今までのNTLで一番席が埋まっていた気がする。
とはいえNTLはいつも心配になるほど空いてるので…
とりあえずの感想としては馬のパペットがリアルですごい!ということ。
基本的に3人で馬のパペットを操作するんだけど、動かす人のことをパペッターと言うらしい。
3人のうち2人が馬のパペットに入り、1人が外から頭を操作する。
栗毛の馬ジョーイのパペッターは茶色系の衣装で、黒毛の馬トップソーンのパペッターは黒い衣装だった。
これがシックでかっこよかった。
エンドロールで
ジョーイの頭部 (名前)
ジョーイの胴部 (名前)
ジョーイの尾部 (名前)
みたいな紹介がされていて(英語)、そりゃそうだと思ったしちょっとおもしろかった。
みんなジョーイ演じてるもんね…
このパペット、観る前も、なんなら観始めて最初は「ゆうて人が動かしてるじゃん…?」って思ってた。
衣装の色の違いに注目していたぐらいだし、馬の頭部にいたっては、パペッターの顔もよく見えるし、そもそも似せているとはいえ作り物だし…
でもそんな印象すぐなくなってしまった。
馬の体がまるで生きてるようにぬるぬる動くのである。
特に目と耳の動物らしさにびっくりしてしまった。
目はたぶん人力で動かしていないと思うのに、なんでこんなに本物の生き物っぽさがあるの?なんでジョーイの知性を感じられるの?
耳は音が出る方を向いたりぴくぴく動いたりして、馬をあんまりよく見たことない私でも、「これが馬なんだ」って分かる…
YouTubeに競馬とコラボしたイベント?の映像があったんだけど、本物の馬の横にいても普通に馬で、なんだかもうって感じである。
なんでこんなに動物っぽさが出てるのかなと考えてみたら、パペットの体がどこかしら常に動いてるからかなと思った。
演出的に止まる部分を除いて、馬がぴたって静止してる場面は私の記憶の限りではなかったと思う。
そして動きがしなやかで美しい。
そういえば劇団四季の『リトルマーメイド』も、水中のシーンでアリエルの姉妹がゆらゆらしてたな…と突然思い出した。
あとパペットと演出の鳴き声の一致もすごくて、これも本物っぽさを感じた要素。
なんか動きといななきがぴったり合ってるように見えるけど、音響一体どうなってるの…?という不思議な気持ちに。
パペットは仔馬が途中から成長した馬に変わるんだけど、成長した方の上には人が乗れるのにも驚いた。
あれ、乗ってる人の重さがパペッター2人に分散されてるとは言え、体のどこに負担がかかるんだろう…
パペットと人だけで見せるのではなく、背景に人影や戦場などが映るので舞台が広く見えた。
背景が時にちぎり絵っぽくなっていて、田舎の風景から戦場まで絵本のように景色が次々に変わっていくのが美しかった。
ストーリーについては、もうとにかくジョーイの健気さと取り巻く運命が残酷すぎて、つらい…と思いながら観ていた。
飼い主が変わりそうになったり、勝手に売られたり、乗り手が次々に死んだり、敵に拾われたり、命懸けの重い労働をさせられたり、一緒に戦ってきた馬を失ったり…
戦争の武器の進化についての描写もあったのだけど、敵国が機関銃や戦車などの新しい武器を使うようになって、早く走れるように鍛えられた馬で戦ってももう太刀打ちできる状況じゃなかったんだとも感じてしまった。
だからこそ、祖国でのびのびと育ったのに、人間の都合で戦争に連れて行かれてぼろぼろになっていくジョーイの対比に悲しくなってしまったわけで…
人間でも耐えられないくらい嫌なことしかないじゃん、もう早く幸せになってよ!と願っていた。
一方で、幸せになれるのか?もしかして、なれないやつ?と疑ってもいた。
だからこそハッピーエンドで安心してしまった。
今まで観たNTLで一番感動する作品かも。
第一次世界大戦時のヨーロッパが舞台なんだけど、全く知識がない状態で観たため国同士の対立や出てくる地名がちょっと分かりにくいなとは感じた。
『戦火の馬』は映画も本もあって、アマゾンだと映画はとってもレビュー件数が多い。
舞台は人間のやりとりで話が進んでいたけど、本は馬の視点で描かれているそう(NTLの幕間のインタビューで作者がそうコメントしていた)。
馬が語り手の小説は他にもあるらしく、テーマが被ってるからこの本は売れなかったんだとも作者は話していた。
小説もおもしろそうなので、早く読みたい。